EC運用

D2Cにおけるサブスク型か非サブスク型のモデルか -ビジネスモデルの選定-

昨今の通販業界、D2C業界にてビジネスモデルとして多くの会社が導入しているのが、サブスクリプション(定期購入)のビジネスモデルです。

ベンチャーではSaas(Software as a Service)と呼ばれる企業群の上場が相次ぎ、高い時価総額をつけています。マネーフォワード、SanSan、ビズリーチ(ビジョナルホールディングス)、ヤプリといった企業はSaaS企業と呼ばれ、高い時価総額をつけているベンチャー企業です。

SaaS企業はインターネット上で提供するソフトウェアを提供しています。そしてその企業のほとんどがサブスクリプションというビジネスモデルを採用しており、法人、個人に対して月額課金のサービス提供をしています。

例えば、Amazon PrimeやNetflixなどは、月額課金のサブスクリプションのビジネスモデルで、サービスを提供しています。

サブスクリプションというビジネスモデルが一般的になるにつれて、通販業界やD2C業界もサブスクリプションというビジネスモデルを採用するようになりました。

企業がサブスクリプションのビジネスモデルを採用する理由

なぜ、サブスクリプションのビジネスモデルを採用するのでしょうか。

事業者から見ると、サブスクリプションであれば1回買い切りではないので、ある程度の売上が予測できます。事業者の言葉を借りるとLTV(Life Time Value)が高くなるのでサブスクリプション型は人気のビジネスモデルです。

近年サブスクリプション型で販売されていなかったものがどんどんサブスクリプション化され、同じものが毎月家に届くようになってきています。

サブスクリプション化するメリット

ビジネスモデルをサブスクリプション化するメリットは、ユーザーよりも事業者側へのメリットがあります。

ビジネスモデルをサブスクリプション型にすることによって、自社の商品を1回買ってくれたユーザーが継続して買ってくれるため高いLTVが期待できます。

そのため、顧客獲得費用にお金を投資することができるのです。

こうした背景もあり、ユーザー獲得の広告費は年々上がり続けています。美容液などのジャンルでは1ユーザー獲得あたりの広告費は1万円を超えることも普通です。育毛剤などでは2万円を超えることもあります。

初回購入を安くして、サブスクリプション型にするのが流行しています。

また、知名度のない商品をサブスクリプションではなく単発購入(定期購入ではない1度きりの購入のこと)の場合、2回目の購入へ誘導するのはなかなか難しいです。

普段我々がドラッグストアやスーパーで購入している商品はどこかで広告を目にしているため、意識しなくとも1度購入したものは2回目以降の購入をするようになります。

しかし、ベンチャーの商品は、広告費もあまりないため大きく広告出稿ができるわけではありませんので、消費者との接点がなく、2回目以降の購入へ誘導できません。

サブスクリプション化するデメリット

サブスクリプション化するデメリットは、ユーザー側にあるように感じます。毎月欲しくもない、もしくは、在庫があまってしまうものに課金してしまうため、ユーザー体験を損なうことがあります。

サブスクリプションを解約させにくくすることでユーザーからクレームがあがってくることも珍しくありません。

解約の際に、一定以上の解約理由を入れない限り解約できないといった場合もあります。

Amazonなどでも定期的に購入するものではないにも関わらず、気づかないうちに定期購入に設定されている場合があります。

たまに家電が定期購入に設定されており、いらないものがもう1つ家に届くということもあります。これは消費者にとってあまりよくないです。

私も最近、Amazonでコンタクトレンズの保存液と、ワックスを購入した際に、最初の設定が定期購入になっているのに気づかず購入してしまったことがあります。

コンタクトレンズの保存液やワックスは消耗品なので2回くらい届いても消費することはできます。しかし、家電などは2つ以上はいらないことが多いですから、最初から定期購入になっていないか注意する必要があります。

サブスクリプション化する合理的な理由を作る

サブスクリプション化するにあたっては合理的な理由が必要です。

例えば、パーソナライズドシャンプーを提供するMEDULLAはパーソナライズド商品にしているため、サブスクリプションにする理由を正当化できます。

あなただけのための商品を毎月届けますと言われるとユーザーも納得し、他の商品に浮気されにくくなるのです。

こうしたパーソナライズド関連の商品は今後ますます増えていくと予想されます。実際にはパーソナライズドされているわけではなくても、ユーザー側にとってパーソナライズドされている感じが見えることが重要であります。

MEDULLAを販売する株式会社SpartyはHOTARUというパーソナルスキンケアブランドを販売はじめています。

HOTARU PERSONALIZED | HOTARU PERSONALIZED

引用:HOTARU公式ページより

サブスクリプションを採用していない業界

EC化が進んでいてもサブスクリプションを採用していない業界はまだ存在します。代表的なものがアパレル業界です。

男性、女性問わず、Instagramを中心としたSNSを経由に集客している事業では、サブスクリプションよりもSNSに投稿するタイミングや、もしくはシーズンごとに顧客からの購買を狙います。

アパレルは衝動的に購入するものも多いこと、またサブスクリプションにする正当性が作りにくいため、サブスクリプションになっていません。

アパレル業界でも、服を定期的にレンタルできるサービスなどではサブスクリプション形態がとられています。

ボストン・コンサルティング・グループの子会社であるBCGDV(ボストン・コンサルティング・グループ デジタルベンチャーズ)と伊勢丹の合弁会社が運営しているサービスであるDROBEはアパレルのサブスクリプションサービスを展開しています。

引用:DROBE公式ページより

日本は四季がありますので、季節ごとにコーディネートした服を届けるというのは理にかなったサービスではあります。

服をレンタルするという概念が広まってきているため、季節ごとに服を借りて返品すると家のクローゼットもいっぱいになりません。

そもそも古着を購入している層にとっては、服をレンタルするというのは抵抗がないので取り組みやすいかもしれません。

現在は取り組んで成功している企業は多くはありませんが、今後アパレル業界でもサブスクリプションの波が来るかもしれません。

例えば、矯正下着の領域ではサブスクリプション型の導入が少しずつ進みつつあります。

ユーザー側にとってのメリットについてあまり説明していませんが、ユーザーは同じものを使い続けることで効果がでるものもありますが、効果が出る前に使うことを辞めてしまう場合も多いです。

そのため、長期的に使ってもらうために無理やりサブスクリプションにしている場合もあります。

現在ZOZOが取り組んでいる、ZOZOSUIT 2は個人の体型のデータを集めているため、個人にあった商品をサブスクリプション型で購入を促すことは難しくないでしょう。

3D計測用ボディースーツ「ZOZOSUIT 2」を発表 ZOZOSUIT 2・ZOZOMATの計測テクノロジーを活用した新サービス共創のパートナー企業を募集  - 株式会社ZOZO

引用:ZOZO公式ページより

サブスクリプションが進んでいる事業

サブスクリプションにすべき事業には特徴があります。その1つはブランドスイッチが起こりにくいことです。

そして、定期的に使用する商品であるということです。先程のアパレルの説明のなかでも、服は使用頻度がまちまちですが、下着などは毎日使いますのでサブスクリプションにする価値はあります。

ブランドスイッチが起こりやすいカテゴリは、シャンプーやスキンケア製品などです。シャンプージプシーという言葉に代表されるように色々なものを試す人が多くいます。

このようなカテゴリだと高いお金を掛けてユーザーを獲得しても他のブランドに切り替えられてしまいます。

そのため、定期縛りという形で最低3回ないし4回といった形をとることで最低限のLTVを確保するという手法もとられています。

しかし、このやり方はユーザーにとってあまりよくないですので敬遠されていっています。

定期縛りについて補足すると、1度購入すると最低4回は購入することが義務付けられているパターンです。

この場合、初回は500円で、2回目以降が7000円という形で、4回購入すると、1人当たり21,500円の売上を見込むことができます。

少なくないお客様が、定期購入になっていることに気づいていません。ちなみに定期縛りを導入すると、4回目までの購入者は初回購入者の90%ほどになります。

10%ほどは定期購入のつもりではないとクレームを言って初回解約してもらっています。

消費者にとって良いか悪いかはさておき、LTVを見込めるという観点で定期縛りは安定したビジネスを構築するうえで1つの戦略であることは否定しません。

ここで売上の側面で非サブスク型とサブスク型を比較してみます。
先程の商品を100人の顧客に販売したとしましょう。定期縛りは設けず、以下のように仮定します。

  • 非サブスク型:初回から7000円で販売。購入1回につき顧客の70%が離脱する
  • サブスク型:初回500円,2回目以降7000円で販売。購入1回につき顧客の30%が離脱する

すると次のような結果が得られます。ご覧の通り、4回目にはサブスク型の総売上は非サブスク型の総売上を上回り、その差は広がり続けます。

商材の話に戻ります。

健康食品などは新しいものをどんどん試しますが、一度好むと長く使いがちです。サントリー(サントリーウエルネス株式会社)が販売するセサミンEXなどはユーザーが長く使う商材として有名です。

非サブスクリプションであるがサブスクリプション型に近い場合

非サブスクリプション型ではあるが、サブスクリプション型というのは少しわかりにくいかもしれません。ここでいうのはトライアルとなるサンプリングをばらまいてそこから本ユーザーを獲得するビジネスモデルです。

ドモホルンリンクルなどはサンプリング商品を無料もしくは無料に近い金額でユーザー配ります。その後、電話や商品に同梱されている同梱物を通して、注文を獲得していきます。

無料で配り、そこから本製品の購入を促すのはコストはかかりますが、ユーザーが手っ取り早く試せるため商品力に自信がある企業にとっては有効です。

ただし、サンプリングを渡すだけでは本製品の購入にはつながらないため、少々しつこいくらいの電話などによって購入を促すことは重要です。

下記画像は、ドモホルンリンクのホームページより引用したものですが3日分のお試しセットを配るものになっています。

引用:ドモホルンリンクル公式ページ

CRM(Customer Relationship Management)という領域が重要になっています。

今後ビジネスをはじめるときは、ビジネスモデルを決めることが重要ではありますが、安易に、サブスクリプションにすべきではないということです。

あくまでサブスクリプションはビジネスモデルの1つであるため、ユーザーにどういう価値を提供するかが重要になってきます。

まずは、ブランドの”ファン”を作り、愛されるブランドにすることが最優先です。その上でビジネスモデルをどのように選んでいくかが重要になってきます。

ビジネスモデルの選定を間違うと大変ではありますが、ファンをたくさん作ったブランドは長期的には生き残ることができます。

サブスクリプションを導入せずに成功する方法

仕組みとしての定期購入を導入せずに、成功するためには、ブランドのロイヤルティを究極的に高めることです。

ブランドへのロイヤルティを高めていくことで、他のブランドに浮気することなく、購入も自分の頻度で行ってくれます。

また、サブスクリプションの仕組みを用意しておくことでこちらから促さなくてもサブスクリプションにしてもらうことができます。

こうしたことは実現することは用意ではありませんが、CRMの考え方を理解し、ブランドロイヤルティを究極的に高めていくことで理論上可能になっていきます。

また別回でブランドロイヤルティについて説明していこうと思います。


参照文献