単なるEC事業者だとあまり関わることが少ないですが、規模が大きくなってくると一緒に仕事をすることになるのが大手広告代理店である、電通や博報堂といった企業です。
大手広告代理店である電通博報堂の2社は、日本の広告業界では大きな存在感を発揮しています。
では、昨今のD2C事業者が大手広告代理店と仕事をしはじめるタイミングと仕事の進め方について解説していきたいと思います。
電通や博報堂はいったい何をしてくれるのか?
電通や博報堂にとっても大きな利益の源泉となり、また独占的に業務を行える事業の1つがテレビ広告枠の買付です。
日本国内においてテレビ広告枠を買い付けることができる広告代理店は限られています。外資系広告代理店は一部を除くとテレビ広告枠の買付ができません。
つまり、テレビ広告枠をもっている広告代理店ではないとテレビCMへ出稿したいクライアントの要望に応えられないということになります。
また、テレビ広告枠といっても、例えば視聴率の高い月9ドラマのスポンサーをしたい、テレビCMを流したいといっても要望はなかなか叶いません。
元SMAPの木村拓哉さんが主演するドラマの枠であれば、これまでひいきにしてた広告代理店や広告主を優先することになり、新興企業が広告を流すこと自体が難しいです。
そのため、最近はラクスルや株式会社CARTA HOLDINGS(VOYAGE GROUPとサイバー・コミュニケーションズが統合)などが、簡単にテレビCMを流せるサービスを作りました。
それでも適切なメディア枠の買い方やいい枠の買い方などは依然として大手広告代理店の独壇場となっています。
テレビCMを流す前にリーチせよ
実は電通や博報堂はテレビCMを流す規模になる前にベンチャー企業に接触しはじめてきています。ベンチャー企業に含まれるD2C業界も同様です。
テレビCMをサポートすることは広告代理店にとって儲かるビジネスでありますが、いざテレビCMの段階になってからサポートしてもタイミング的に遅いので、その前段階から入っていきます。
具体的にはプロモーションや、テレビCMを伴わないオフライン施策、クライアント先をつなげてあげる営業サポート、ベンチャー企業に対するコンサルティングサービスなどあの手この手で電通や博報堂がベンチャー企業に対してのアプローチを行っています。
当然ベンチャー企業側もいきなり大金を払うのは難しいので、電通や博報堂側も低価格のプランでまずは関係構築からはじめていきます。
急成長している企業であれば、テレビCMをマーケティング施策の中にいれることも珍しくないのですので、テレビCMという段階になってから、以前から付き合いがあればその代理店に頼むということになります。
社長や幹部に総合広告代理店出身者がいればコネをつたって有利に交渉できるので、出身企業に声をかけますが、そうでない場合は新規の取引になります。
よって広告代理店側も、いかに新規取引をより前段階から交渉できるかを考えています。
テレビ広告はブラックボックス
テレビ広告は長年の経験があればある程度の相場がありますが、経験がない場合は、高い相場で契約させられることも珍しくありません。
Google広告や、Facebook広告、LINE広告であれば、入札単価やクリック単価などが可視化されるためある程度相場を把握することができます。特にECであればデジタル広告経由の購入を正確に測定することができるため、顧客を獲得するための費用をプラットフォームごとに正確に把握することができます。
よって、この広告プラットフォームは良いから出稿金額を増やす、この広告プラットフォームは成果が悪いから出稿はなくそうといった形で、自然と競争が促されます。
一方、テレビ広告の場合、実質的な競合が存在しないため広告代理店が提示する価格(厳密には広告代理店がテレビ局に対して交渉している金額)が鍵になってきます。
しかし、相場が公開されていないことからはじめて広告代理店と話をする場合は相場がわからず意思決定に踏み切れない場面に多数遭遇します。
デジタル広告と異なり、大手企業とベンチャー企業では広告枠の値段についての交渉力も違うためベンチャー企業は不利に立たされることがあります。一方で、大手企業は何十億円もテレビCMに投下しているので広告代理店、ひいてはテレビ局にとっての大口顧客ですので優遇するのは当然といえば当然です。
こうした価格の相場については、事業会社のマーケティングに精通している方もしくは大手広告代理店でテレビ局の担当をしていた方に相談するとよいでしょう。
テレビ以外の大手広告代理店の存在
予算が比較的多くあり、マーケティング戦略において、広告の露出先が多岐に渡る場合は、”代理業”をしてくれる広告代理店に依頼をするのは理にかなっています。
特に、電通博報堂のような総合代理店は文字通り、総合的に業務を行えますので、テレビ、新聞、OOH、ラジオ、デジタルといった色々な広告面に対してのコネクションや経験値がありますので最適なメディア戦略について提案が来ます。
広告予算をすべて1つの広告代理店に集約したら、広告代理店も、広告主企業も同じベクトルを向くことができます。
デジタル代理店だけ別のところを使用していた場合、当然ですが、デジタル代理店はデジタルへの投下を増やそうとしますし、デジタル以外のところを担当する代理店はデジタルの支出はできるだけ抑えて、デジタル以外のところへお金を投資するように促します。
ビジネスである以上このような行動原理は当然でありますので、できるだけ衝突が起きないように、予算を1つの代理店に預けるということは合理的な戦略です。
テレビCM以外のマス露出戦略を電通や博報堂は事例をもっていますので、類似企業の他社戦略について話を聞いてみるといいでしょう。
大手であればあるほどいろいろな企業のマーケティング戦略にかかわってきており、たくさんのお金をつかった経験がありますから、いい事例がたくさんあります。
予算感の規模
いくらくらいであれば大手広告代理店と付き合うべきかというところですが、答えはありません。例えば年間10億円の広告予算があり、デジタル以外の支出があれば大手広告代理店に依頼する価値がありますが、年間1億円くらいであれば迷うところです。
一方で、少額でも契約をしたいという大手広告代理店の思惑もありますので、接触自体は早めにしておくとよいでしょう。
どういう広告代理店と一緒に仕事をしていけばよいかわからないという方はぜひご相談ください。