D2C分析

MEDULLAが事業をどう伸ばしたか事例研究~Sparty社

こんにちは、D2Cの具体的な事業成長について分析していきたいと思います。

公開情報に基づいて分析していきますので深い洞察ができていない部分や、推測の部分もありますのでご容赦ください。私自身が消費財メーカーで働いていた経験も少し交えてお話します。

MEDULLAについて

今回はパーソナライズヘアケア事業を手掛けるMEDULLA(メデュラ)です。以前より注目しており、プロダクト自体も使用したことがあるため応援したい企業の1つです。

MEDULLAを運営する株式会社Spartyは博報堂出身の深山 陽介社長によって設立された会社です。設立は2017年と比較的新しい会社です。

パーソナライズドのシャンプー&トリートメント事業を中心にパーソナライズスキンケア「HOTARU PERSONALIZED」やトリートメント専門サロン「SALON DE MEDULLA」や、歯列矯正なども展開し、今後も成長が期待できる企業です。

苦難の船出

主力商品である2018年に発売開始されたMEDULLAは、OEMメーカーが製造販売の免許を偽造しているという最悪の裏切りに会い発売が停止されました。

免許を偽装していたOEMメーカーの会社の社長は書類送検される形となりました。

しかし、そんな状況に対して手をさしのべたのはOEMメーカーの大手であるサティス製薬です。

資本業務提携という形で、MEDULLAのパーソナライズドをサポートしはじめました。結果としてMEDULLAは事業を再開することができました。

同社のnoteを見ると決して他責にせず、顧客に真摯に向かっている様子が見えます。

事業再開後はアフィリエイト戦略が成功

事業再開後は、アドアフィリエイターを駆使して、事業を伸ばしていきます。

InstagramやFacebookなどで従来もヘアケア商品は売れていましたが、パーソナライズドという付加価値があることで、アフィリエイトによって販売がしやすくなりました。

また、YouTube広告を活用したアフィリエイトによっても事業を大きく伸ばしていきました。規模的には数十億円になっているのではないかと言われています。

YouTube広告を利用してシャンプーを販売するというのは当時はあまりなく、非常に成功した事例だったと言えます。

パーソナライズドということだけに限らず、売り方まで新しい手法に取り組んでいるのでspartyは常にチャレンジをしているように思います。

アドアフィリエイターに好かれる商品にすることは必須ですが、MEDULLAはタレント起用を続けたことも大きかったように思います。

薬機法の関係で効果効能を責めていくのは、事業者側にとっても広告運用をするアフィリエイターにとってもリスクです。

しかし、芸能人が使っているというのは訴求ポイントとして薬機法に引っかかることなく使えるのでアフィリエイターに好まれます。

過去に同社のテレビCMや広告に起用されている方をみると、まつきりな、安達祐実、AAAの伊藤千晃という形で継続的に色々な方を起用しています。

他にもアフィリエイターなどによって漫画LPなどの創意工夫をした広告を目にすることもありました。アフィリエイターにとってもパーソナライズドという商品であることは売りやすい商材であったことでしょう。

競合環境

競合として、パーソナライズドシャンプー、トリートメントは、ユニリーバが展開するLaborica や、事業譲渡を経て運営が続くmixx、そしてI-neが運営するBOTANISTのパーソナライズドシャンプーの事業やCONSTELLA(コンステラ)がありますが、いずれもMEDULLAが圧倒しているように思います。

最初に事業をはじめただけではなくアフィリエイトを駆使した拡大戦略が非常にうまく言ったように思います。

そのため競合は実質的にパーソナライズド市場ではいない状態です。MEDULLAが競合としているのは、美容室における美容師のオススメしてくるシャンプーやトリートメントなどが該当してくるといえます。

月額6,980円(税抜)であるため、ドラッグストアのような1000円未満の安価な商品が競合になることはなく高価なシャンプートリートメントは、美容室で購入するような商品とバッティングしてくるといえるでしょう。

一方で、パーソナライズドという体験をしたことがない方にとっては全く新しいものであり、新たな市場を開拓したといえます。

最初は提携した美容室の店舗での診断もありましたが、これから自社で美容室経営を拡大していくのではないかと予想されます。

さて、Sparty社はベンチャーでありながら大型な資金調達によって成長しています。株主についてみてみましょう。

株主

株主はOEMメーカーであるサティス製薬に加えて、XTech Ventures、アカツキ、ジンズホールディングス、丸井グループが入っています。XTech Venturesは有望なD2Cへの投資を行っていますし、店舗を構えてメガネ事業で成功してきたジンズの存在も大きいでしょう。

そして何より、常設店やポップアップをするにあたっての最大のパートナーであったマルイを展開する丸井グループの出資は大きいと予想されます。

丸井側もD2Cへの投資を増やしていますし、成長株のD2C銘柄であるSpartyへの出資は良い機会となったでしょう。

OEMや小売を株主にしていく戦略は理にかなっているといえます。特にOEM側の出資は例が少なかったですし、結果的に救済的な出資でしたが、サティス製薬にとってもSpartyにとっても大きい資本業務提携だったように思います。

今後も出資したい企業は多く、もしくは調達せずにそのまま上場まで行くかもしれません。ここまで順調に美容領域で伸びている企業も珍しいのではないでしょうか。

株主一覧

パーソナライズド市場の先駆け

Function of Beautyがアメリカのパーソナライズドシャンプーでは先行者としてありましたが、日本ではパーソナライズドシャンプーはなく、MEDULLAが先駆けでした。

他にもサプリをはじめパーソナライズド市場がでてきていますが、2020年前後のパーソナライズド市場を開拓したのはMEDULLAではないかと思います。サプリですとポーラ・オルビスに買収されたFUJIMIなどが代表的ですね。

一方で、ヘアケアはパーソナライズドに限界があり、基本的な処方は限りがあり、パーソナライズドといっても配合1%未満のところでパーソナライズドしており本質的なパーソナライズド化はこれからの課題であり、期待ポイントといえるでしょう。

配合1%未満であれば表記の順番の法律の縛りがない点がパーソナライズド事業者にとっては大きいです。

ベースとなる界面活性剤をパーソナライズドするのは非常に難易度が高く、工場を自前で抱えている会社にとっても難しいものがあります。真の意味でパーソナライズドできる時代がきているときは美容業界には大きな革命が起きているはずです。

ベンチマーク

企業体としてのベンチマークは日本国内にはまだまだ少ないのではないでしょうか。露出の大きい北の達人コーポレーションやマナラ化粧品、最近上場したWaqooなどベンチマークはありますが、いずれも株価は決して高いとは言えませんし、ビューティーテックのくくりの銘柄にするときに上場時の株価ははねるでしょう。

海外ですと、CasperやWarby Parkerなど、D2C銘柄が今後比較対象の1つとなるかもしれません。

個人のデータを獲得し、個別カスタマイズできる商品を売り続けることができればチャンスです。

個人的にはパーソナライズドというくくりで様々な領域に拡大していくというのは株価的な面でも大きな可能性を秘めていると考えています。

1人の個人情報を集め、あらゆる買い物に対して提案をしていけるようであれば、あらゆる買い物を抑えることができることになります。

今後のビジネスの状況にはなるとおもいますが、ビジネス市場においては注目の企業銘柄であることには間違いありません。

LTVには限界があるのでクロスセルに勝機

パーソナライズドヘアケアブランドでは限界もあります。シャンプーやトリートメントは消費財のなかでもブランドスイッチが大きい商材です。そのためLTVには限界がでてきます。

定期販売の平均的な解約回数である3~4回目での解約が多くなっているのではないかと推測されます。つまりLTVでいくとヘアケアのみだと2万円を超えるあたりではないかと考えております。

真偽はわかりませんが、MEDULLAはインターネット上で見られたコメントでは、インターネット上での解約の際に一定文字数以上の解約理由をいれないと解約ができなかったり、あるときはインターネット上での解約を停止したりして試行錯誤しているようです。

しかし、小手先のテクニックで対策をしても顧客は離れていくので大きなインパクトにはなりません。それよりも一度獲得したユーザーに対してHOTARUなどの商品を販売していくクロスセル戦略が今後の鍵になってくるのではないでしょうか。

加えて、パーソナライズドではないバージョンの商品も販売していっていますし、小売展開を見据えた事業を展開しています。

全方位的にやりきれることを全速力でやっているベンチャーらしい組織という印象をもっています。

また、CPAが高騰する昨今のネット広告戦略から、よりマスにいくためにテレビ広告の出稿比率を増やしていくことがカギになっていくと考えております。

マスにいくうえでテレビは避けて通ることは当然できませんし、今後の事業展開において、テレビ広告のウエイトを広げていくのではないでしょうか。

1度テレビ広告の成功体験がでてくれば、他商品への展開は可能です。また代表である深山社長は博報堂の出身ですので、むしろマス広告にウエイトが置かれだしてからより強みが出せるのではないでしょうか。

個人的にも応援している企業で私も商品を購入したことがありますが診断自体が面白い体験でした。

このような面白い体験を中心に20代~40代の顧客を増やしつつ、アフィリエイトと、マス広告戦略の組み合わせによってさらなる成長、そして上場後も高い株価になっていくのではないでしょうか。