マーケティングTips

「信頼関係を大事にせよ」ベンチャー企業と電通のマーケティング対談

普段からベンチャー企業やスタートアップのマーケティングの支援をさせていただいておりますが、電通や博報堂といった広告代理店と取引をはじめテレビCM広告をやりはじめたいという相談を受けます。

昨今はベンチャー業界でもD2C企業やSaaS企業といった企業群がテレビCMを使ったマーケティング活動をはじめています。

今回は現役の電通社員の方をお迎えし、ベンチャー企業がマスメディアへの進出や電通との取引についてお話いたしました。

経営者やマーケターの方で、これからマスメディアをはじめとした、マーケティングを強化していきたいと考えている方は必見です。

電通とベンチャー企業のマーケターによるマーケティング対談

-本日はよろしくおねがいします。いきなりですが、電通はベンチャー企業とも取引してくれるのでしょうか。

はい、もちろんです。最近は大手総合広告代理店もスタートアップでいう、シードやアーリーステージから関係を作ろうとしています。

これまで大きな金額をお支払いいただいていたナショナルクライアントの出稿量が落ちたり、デジタルシフトが加速したりすると、広告代理店としては売上が落ちてしまいます。

そうした背景もあり、これから大きな出稿する可能性がある企業にあたるようになりました。その1つがスタートアップです。

直近のスタートアップの状況を見ていると大型の資金調達をして、広告費にあてていますが、その中でもテレビ広告への投資が大きいように思います。テレビの前のフェーズだとタクシー広告を見かけますね。

ベンチャー企業がテレビ広告を打つべきタイミングと付き合い方

-テレビ広告を扱う代理店は電通博報堂をはじめ一部の代理店のため、テレビCMをはじめるタイミングの関係構築では遅いのでしょうか。

例えば大型資金調達後や、上場直前にいっても大手代理店は相手にされません。代理店に限らずですが、つらいときから支えてくれたパートナー企業は大事にされますし、ロジックだけではない部分があります。

広告出稿額が少なく、広告代理店にとってほとんど儲からない時期からサポートさせていただき、大きな出稿をいただけるまでサポートし続けているのでベンチャー投資家とほんの少しだけ近い部分はあるかもしれません。

-そもそもベンチャー企業はなぜテレビCM広告を使うのでしょうか。

デジタル広告で獲得出来ない層にリーチできるからです。また、使う費用にもよりますが一定以上の費用になるとテレビ広告の方が認知獲得をするうえで費用が安くなります。

デジタルだけでは10代や20代前半までの世代をのぞくとリーチに限界があります。

認知のパイを広げるうえではテレビにまさるものはないのではないでしょうか。

デジタルだけでリーチに限界がでるまえに、事業を拡大していくうえで、テレビでパイを拡大していき、デジタルで獲得するというサイクルができていけば良いと思います。

デジタルだけで認知をとっていくのはコスト的にも効率的にも限界がやってきます。

-ベンチャー企業でテレビCMを使ってうまくいっている例はありますか。

具体的な企業は開示できないのですが、D2C企業だと消費者に対してはもちろん取引先などに効果的と聞きます。例えば、小売店での取り扱いの拡大に寄与したなどです。

あと、ベンチャー企業だとプロダクトとは別に、採用に効果的と耳にします。テレビCMをやっている企業だと入社する方はもちろん、そのご家族にも安心してもらえるということがあります。事業とは別観点ですがこうしたこともメリットとしてあります。

-テレビCMを活用していくうえで何かコツのようなものはありますか。

新商品を短期間で一気に認知する場合に大量投下することがありますが、基本的には少しずつでもいいので時間をかけて投下することが重要ではないでしょうか。

あまりに短期間に盛大にやりすぎて、その後の認知度や売上につながらなかったと聞きます。

またベンチャー企業やスタートアップの方は、長期間のことは考える一方、目先の売上も大事だと思います。目先の売上を作るということを考えても長期間で少しずつ投下していくことは大事だと思います。

加えて、視聴率が高い枠をとらないといけないです。視聴率が高ければ高いほど枠がたくさんあるので、安く流せます。

また、シーズナリティがない商材であれば、3,4月やクリスマスといった時期をはずして流すと効果的です。

-相性の良い商材はありますか。

基本的にtoC向けのものであれば何でも効果的だと思います。一方、工業用重機などBtoBのニッチ商材だと効果が見込めないことがあります。それでも採用にきくということで重機メーカーのテレビCM広告出稿額は大きいです。

最近よくWEBサービス系のテレビCMは見ますが、WEBサービスは非常に費用対効果がよい印象です。テレビ以外のマスメディアでも新聞などでも高い効果がでる事例があります。

大手広告代理店を選ぶ理由

-最近はラクスルが展開するノバセルなどテレビCMをサポートするサービスがありますが競合にあたるのでしょうか。

ラクスルに限らず運用型テレビCMと呼ばれるサービスがいくつかでてきていますし、利用する企業の話を聞くこともあります。

スタートアップはWEB広告からはじめることが多く、”計測できる”広告の延長線上でテレビ広告をはじめることがあると聞きます。

実は大手広告代理店であっても同様のテレビCMの計測ツールをもっています。台頭してきている運用型テレビCMサービスは、従来からある大手広告代理店はトラッキングできないという形にもっていってうまくマーケティングをしていると思います。

実際のところは運用型テレビCMという形でABテストを実施しながら広告を出稿していく手法は大手広告代理店でもできますし、実際にやっています。

特定のエリアだけでやってみて、クリエイティブをいくつかテストし、成功したものを全国展開していくパターンです。

-電通に頼むメリットとして、安くテレビCMが買えて、いい番組枠を抑えられるというのがありますがどうでしょうか。

そのとおりだと思います。普段からテレビ局担当がテレビ局と強固な関係を築いていますので、他社よりも安くテレビCMの枠を抑えることができます。

私もテレビ局担当として働いていましたが、テレビ局の気分次第で値段も大きく変わってくるので関係構築ができている代理店は有利です。

また、有名で人気のテレビ番組などは大手広告代理店が番組枠を抑えているので、いい枠で露出していく場合には弊社のような会社に強みがあります。

テレビ局側も、電通がテレビ番組枠を販売してくれて売上をたてているのでテレビ局と広告代理店は持ちつ持たれつの部分はあります。

電通に頼むとテレビCMの値段が高いと勘違いされていますが、むしろ逆です。

-ありがとうございます。スタートアップのなかでもマーケティング予算が低予算の企業でも電通と取引することができるのでしょうか。

できます。例えば100万円からでも取引はできます。前金という条件がついているのでその点さえクリアできれば基本的に取引は可能です。

最初はお金を払うという関係でなくても壁打ち相手として使っていただくのでも十分です。テレビCMをやりたいといっても予算の関係から今はやめたほうがいいと我々からアドバイスすることもありますし。フラットに最初はご相談いただいて大丈夫です。

たまに大企業じゃないと相手にしてくれないと勘違いしていらっしゃる方もいますが、そんなことは全くないですし、我々は裏方なので気軽に声をかけてほしいです。

適した営業マンを見極めるには

-電通と博報堂でテレビCMをやりたいとなったときに違いはあるのでしょうか。

私個人の考えでは大きな違いはないと思います。むしろ、フロントにでてくる担当営業が誰かということが大事になってきます。

電通にも優秀な営業担当がいれば、そうでない営業担当もいます。おそらく博報堂さんも同じではないでしょうか。同様にADKさんにも優秀な営業担当がいるはずですから、会社というよりも営業担当個人単位で考えることが重要です。

-どのように良い担当者を探していったらよいでしょうか。

ベンチャーであれば、同じベンチャー内で良い担当者を聞いて回るのが一番だと思います。ベンチャーのなかでもうまくいっている場合、同じ担当者がしていることも珍しくないですし、紹介してもらうのが一番です。

-もう少し具体的にこういう人なら確度高く良い担当者であるというのはありますか。

回答が難しい質問ですが、ベンチャー向けのサービスでD2CやWEBサービスだと40代以上の担当者は商材理解が浅いですし、20代中盤だとまだ経験も浅いので、30代で経験を積んできた担当者がベンチャー企業やスタートアップと相性がよいことが多いですかね。

-紹介してもらったとしても、営業担当のよしあしを見極めるのはナレッジのないベンチャー、スタートアップでは難しいように思います。

デジタル広告はすでに運用されている企業は多いと思いますのでデジタル広告を複数の広告代理店に依頼してみて、良い営業担当かどうか見極めるのがよいのではないでしょうか。

その代わりテレビをはじめとするマスメディアへの出稿は絶対1社に絞っておいたほうがよいです。

-どうしてでしょうか。

同じ広告主の提案を複数の代理店がテレビ局に対してした場合、テレビ局側が高い値段を最初から提示してきます。

一方、1社だけであれば代理店側がテレビ局側に交渉し、一番安い価格で買い付けることができます。稀にコンペのような形でテレビCM枠の提案をしますが広告主からすると避けたほうがよいでしょう。クリエイティブをコンペするのは分かりますが。

-デジタル広告だと、電通ならばデジタルになるので、テレビCMを担当する電通本体と営業マンが異なるのではないでしょうか。

フロントに出る営業マンは、営業全体をするので、区分けがありません。デジタル専門の営業担当はいません。

テレビ広告をやる際もデジタル広告をやる際も同じ営業マンになりますのでデジタル広告の段階で複数社を使ってみて比較するとよいでしょう。

広告を成功させるには代理店との信頼関係が重要である

-デジタル広告だとデジタル専業の代理店もたくさんありますし、電通に頼むメリットはありますか。

そうですね、ある程度の金額になると大きな予算を使った経験のあるデジタル専門の広告代理店は少ないです。

大きい予算の運用となると、大手の広告代理店が強みを発揮します。また、我々はデジタル以外にも例えば新聞やOOHも一緒に扱うことができますし、最適な予算の使い方できます。

アフィリエイト広告だけで運用する場合は、ネット専業のASPに頼めば十分ですが、そもそもアフィリエイト以外もすべきなのか迷っている場合は総合広告代理店の強みがいきますね。

あと、最近は薬事法や景品表示法で刺されてしまう企業がありますが、電通はそうした面のケアや知見が多くありますので、コンプライアンスが後回しになりがちなベンチャーこそ電通のような総合代理店に頼む価値がありますし、我々も期待に答えるべく一生懸命働きます。

-広告代理店とうまく付き合っている企業はどういうところなのでしょうか。

大前提として広告代理店というのは貸し借りを重んじる会社です。

大企業の例になってしまいますが、広告枠があまっていたときにクライアントに購入していただけるとその恩を忘れません。そのため、次にいい枠を安く融通するなど持ちつ持たれつつという形で広告主と代理店の間で関係ができていると強いですね。

我々はお金をいただく側なので広告主側は何も気にする必要はないですが、広告代理店の社員も人間なので意外と義理人情みたいなのがあるクライアントは代理店側から好かれて結果的にビジネスにとってもプラスになることが多いですね。

-ベンチャーだと初めての取引になることも多くうまく関係性を築きにくいと思いますが、どうしたら代理店側が一生懸命はたらいてくれますでしょうか。

オリエン(オリエンテーション:依頼内容の説明)をしっかりすることです。持っている情報をしっかりと全部開示して、代理店側に共有をできる限りしていただくとうまくいくと思います。

特にベンチャー企業だと情報をあまり開示せず代理店を完全に信じきれていない段階で話を進めてしまうと、良いアウトプットがでてきません。

課題も含めすべて開示することがお互い仕事をするうえで重要な気がします。

また課題がわからなければ我々が一緒に考えますし、まず信頼してもらえるとうれしいです。

クライアントのためにできることを精一杯やっていきます。

-ありがとうございました、大変参考になるお話でした。

最後に

今回は電通の方に現役経営者やマーケター向けに、テレビCMの活用方法や電通をはじめとする大手広告代理店との付き合い方についてお話してもらいました。

私もベンチャー企業のマーケティングを支援し、実際に電通などの大手広告代理店の担当者を紹介することがありますので、マーケティング戦略にお悩みの方はぜひ下記フォームからご相談ください