これからD2Cをはじめたいという企業からご相談をうけるのは、ブランドのコンセプトをどのように作っていったらよいか?ということです。
ブランドコンセプトの作り方は非常に多くのやり方があり、会社ごとに違うので厳密に区切ることができませんが、ここでは昨今のブランド作りのトレンドを踏まえて大きく2つの方向性にてお話させていただきます。
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①伸びている市場の模倣品をリリースすることを決めて、作りながらコンセプトを作っていく
このパターンが最近は増えているように思います。多くのD2C経営者にこのお話をすると否定してきますが、伸びている、儲かっている、儲かりそうだからという理由で参入し、コンセプトは後回しで商品リリースを急ぐパターンです。
このやり方は、IT業界出身者に多いやり方で、利益をいち早くあげるためには良いやり方と言えます。
ITのなかでもインターネット業界は模倣サービスがどんどんでてきて、スピードが命であります。
例えば、メルカリは、ラクマよりも後発サービスでしたが、サービスの改善スピードや資金投下力で、ラクマを圧倒し、現在の地位を築いています。
伸びている市場に対して、すぐに参入し、参入しながらコンセプトを改善していくのは重要なことです。
何事もユーザーの反応を見ないと分からないため、出してから小刻みに変えていくというのは重要な発想です。
元々メーカーでものづくりをしていた人にとってはリリースしてからコロコロ変更するというのは抵抗感のある方も多いですが、現代ではIT業界の手法が良いとされている面もあるので参考にすべきでしょう。
1のパターンの作り方でいくと、化粧水のなかでも、幹細胞系の市場が伸びているなということで、幹細胞美容液のリリースに動き出し、簡易なコンセプト(例えば、働く女性向けの時短でできるけど効果があるオールインワン幹細胞美容といった具合)を考えて、商品開発やランディングページ制作に向かいます。
現状、OEMメーカーを見ても商品のテクノロジー的な差別化は難しく、商品内容もある程度似通ってしまいます。自社工場ではなくOEMメーカーで作る以上、競合他社と商品の中身自体が似てしまうことは避けられません。
自社工場をもっている大手企業であっても、研究開発部門(R&D部門)に会社によって得意不得意があるので、開発力がある領域は似通ってしまいます。
簡単なコンセプトと市場を決めたら、一直線にスピードを重視して、リリースしていくスタイルは現代の潮流となっています。
そしてあまり売れなかった場合は、撤退するなど、スクラップアンドビルドをクイックに行います。
では、こうしたやり方ではないやり方とはどういうものがあるでしょうか。
②コンセプトテストを事前に実施し、所定の要件を満たした場合のみ発売する
1との違いがあまりわからないかもしれませんが、コンセプトの段階で消費者調査を入念にかけて、コンセプトを定量的に評価します。1でも作ったコンセプトを簡易にテストいたしますが、調査の深さと量が異なってきます。そもそもコンセプトの受けが悪ければ作り直しをして、発売までに、クリエイティブテストなど入念に調査をします。そのため、調査費用だけでも大きな金額がかかってきます。
場合によっては基準をクリアできない場合は大幅に発売を遅延することをいといません。こうしたやり方は、大企業のブランド・マーケティングを重視する企業で重要視されています。
大事なポイントは偉い人の一存で決めるのではなく、事前に合意したポイントをクリアできたかどうかで判断するということです。
勢いで決めていく部分も存在しますが、客観的に見て納得の行く進め方で行います。
コンセプトをテストするといってもなかなかイメージがわきにくいかもしれませんが、定量調査、定性調査を駆使して、事前に作ったコンセプトのいくつかが消費者のインサイトをとらえており、消費者の問題解決となる商品となっているかを確認します。
調査手法にはWEB上でのアンケート方式から、グループインタビューによる方式、1:1の深堀り調査まで様々あります。
そもそもの消費者インサイトをとらえるというところからはじめるパターンもありますが事業領域に知見があるメンバーがいる場合はゼロからインサイトを掘り出すというより、ある程度インサイトに仮説を建てて、そのインサイトが適切なものであるか、解決したら消費者が大きく喜ぶかどうかなどを検証していくパターンがD2Cでは多いように思います。
私が経営しているブランド・マーケティングコンサルティング会社においても、予算がある程度あり、他にすでに事業があり、新規事業としてはじめる場合は特に、調査を綿密に設計して進めることが多いです。
その会社にとって1つ目の商品の会社の場合は、消費者調査をするのではなく創業者の思いと、創業者自身が悩んでいたことを解決したいということで、コンセプト作りがある程度簡単に進みます。そのため、あとは販売後に共感する人がどれだけいるか、もしくはプロモーションをどれだけできるかという勝負になってきます。
一方、2つ目の商品は創業者の思いだけではうまくいかない、また事業の再現性が求められてくるので私のような外部のマーケティングコンサルタントへ依頼が来ます。
もちろん会社にとって1つ目の商品でも、事業責任者の思いが特になく、売上、利益を目的として行う場合は進め方の設計が必要です。
多くの企業を見させていただいて、事前に決めたことを実行し販売までの基準を緩めることなく進める企業のほうが長期的には成功しております。
先程述べた1の手法で成功しているのは、基準ではなく、PDCAのスピードと、手数で決まります。
ランディングページ(LP)を改善できる体制が内製されており、細かい要望にも答えるデザイナーやエンジニアがいるかが大事になってきます。
一方、2のやり方の場合、作業量自体は多いですが変更回数は少なくなり、慎重に進めていくことになります。
1と2のどっちのやり方がいいというのはなく、会社にあったやり方をする必要が大事です。思いなどは特になく儲けていきたい場合は1のやり方で全然良いと思います。私も会社を経営してきて、綺麗事抜きに儲けることの重要性は理解しており、お金がなければ何もできないので1のやり方は手法として良いものと考えています。
一方、思いが強くあり、また10年後も残すブランドやりたい場合は2のやり方を推奨したいと思います。10年後も残るブランド作るのは容易ではありません。仕組み化と創業者や事業責任者のパッションがないと絶対に続きません。
ブランドコンセプト設計の粒度
ブランドコンセプトの設計の粒度については様々です。ブランドコンセプトはどれだけ固めても細かい変更は後ででてきます。一方でコアとなるものは変更することは少なくなりますので、メンバーとブランドの価値観を共有するために最初の段階からブランドコンセプトを設計しておくことが重要です。
ブランドであることの価値
「ブランド」をなぜ作るかというと、人が抜けても、メンバーが入れ替わっても、ブランドのコンセプトが固まっていたら、ブランドが生き続けることになるからです。
ブランドコンセプトが固まってくるとプロモーション施策やマーケティング施策を考えるときもコンセプトにのっとって施策が行われるので、ブランドの根本的な戦略から大きくずれることが少なくなります。
何も規範となるものがない状態であると担当者が変わるたびに一貫性のない施策ができあがります。
また、社長がすべてをコントロールしていたとしても、周りのメンバーを納得させるという意味でもブランドコンセプトがきっちりと決まっていることは重要です。
ブランドコンセプトに関する相談
ブランドコンセプト作りについて相談がある方はぜひご連絡をください。簡単な壁打ちからはじめさせていただいております。
参考文献
- Park, C. Whan, Sandra Milberg, and Robert Lawson. “Evaluation of brand extensions: The role of product feature similarity and brand concept consistency.” Journal of consumer research 18.2 (1991): 185-193.
- Park, C. Whan, Bernard J. Jaworski, and Deborah J. MacInnis. “Strategic brand concept-image management.” Journal of marketing 50.4 (1986): 135-145.
- 古川裕康. “消費価値概念に基づくブランド・イメージ戦略類型.” (2011).