D2C分析

PHOEBE BEAUTY UPの事業成長を考える~DINETTE株式会社の事例

DINETTE社は社名の通り、DINÉTTEというメディアを運営している企業です。

メディアが成長していったタイミングで資金調達を行いD2CブランドであるPHOEBE BEAUTY UPを販売しました。

メディアが育つと、多くのユーザーを抱え込むことができ、集客コストを安くできるというメリットがあります。

最近だとLOCARIを運営するWondershakeなどもD2Cプロダクトを販売していますが、メディアからD2Cへ展開するというのは最近の潮流と言えます。

代表の尾崎社長について

尾崎社長は、学生時代からお天気お姉さんをはじめ芸能関連の活動をされており、就職せずに起業したパターンです。

一方で、愛知の旭丘高等学校、そして中央大学総合政策学部卒業と高学歴であり、通常の就職をしてもおかしくない経歴(実際に内定を獲得したとwikipediaに記載あり)ですが、起業にチャレンジした起業家です。

メディア事業からD2Cへ展開と一言でいっても簡単ではなく、試行錯誤の回数が多い会社のように感じました。

メディア事業は法人としては決して収益性が高い事業ではなく、メディア会社の多くは受託をして利益を積み上げています。そのためメディア単体で成り立たせるのではなくメディアを起点に他のビジネスへ展開していくことが重要と考えています。

メディアでの発信や、事業の成長を見ると大変優秀な社長である印象を受けます。

wikipedia

株主

DINETTE株式会社は株主に株式会社MTG Ventures 、 株式会社サティス製薬 、 D2C&Co.株式会社 、 株式会社ポーラ・オルビスホールディングス 、株式会社セレス+個人投資家といったところがならんでいます。

MTGやポーラ・オルビスはD2Cのかなり先駆け的な存在で成功していますし、OEMであるサティス製薬、アフィリエイターを束ねるセレスなど理想的な株主構成になっています。

東京一辺倒のベンチャーにおいてMTGは愛知の有名新興ベンチャーであり、一時期高額な時価総額もついていました。

ちなみにD2C&Co.は丸井のCVCとしての位置付けのため、丸井グループが投資しています。小売も抑えているので理想的な株主構成ではないでしょうか。

D2Cですが、集客メディアもあることからCPAを抑えつつ、アフィリエイト広告を踏むことができるため、利益は出やすいと思います。

ニッチマーケットで高いシェアをとっていく戦略で今後も伸びると思いますし、大きい市場に参入することも可能だと思われます。

ニッチマーケットでシェアをとるためにはプロダクト力が非常に重要であり、売上がでている同社においてはプロダクト力の高さが伺えます。

PHEBE BEAUTY UPの戦略

まつげ美容液は男性にはあまり馴染みがないと思いますが、女性にとっても市場規模が小さく、参入する企業は多くはありませんでした。

ビジネス発想的なD2C参入でいくとスキンケアなどの市場が大きいところに参入し、0.1%でも市場をとれれば成功となりますが、まつげ美容液というニッチ市場にてシェアを大きく奪いにいくのはすごいチャレンジに思いました。

DINETTEというメディアがあったことも大きいとは思いますが、尾崎社長自身が作りたいものを作っていったのが大きいと思います。

芸能活動をされていたため、流行にも詳しく、作りたいものを作るという戦い方はマネができず競合優位性になるといえます。

PHOEBE BEAUTY UPアイラッシュセラムに興味がある方はぜひ一度試してみると良いと思います。

amazon商品ページ

ベンチマーク

DINETTE社はメディア時代は、C Channelやノイン、MIMI TVやHOWTOなどを当時の競合としてとらえていました。

現在はD2C領域なため、D2Cの企業での勝負になります。

ちなみにまつげ美容液自体はニッチ市場ですが資生堂やロレアルといった有名企業も参入しています。しかし各化粧品メーカーは決してまつげ美容液に注力しているわけではありません。

成長企業ですとTHEまつげ美容液を販売しているフローフシが注目されています。

ちなみに検索候補ででてきたので言及すると、海外の有名D2C企業であるGlossierとデザインが似ていると指摘されることもありますが、企業の成長という意味でもいいベンチマークだと思われます。

PHOEBE BEAUTY UPをGlossierの”パクリ”を揶揄する声もありますが、個人的には、パクリといわれようが事業が成長することがベンチャーにとっては大事であり、かつユーザーがついてきているので1つの考え方と解釈しています。

海外のものを日本で再発明するというのは数えたらキリがないです。一方、日本にいるGlossierユーザーにとっては受け入れることが難しいというのも理解はできます。

例えデザインをパクっていたとしても、簡単には売れるわけではありませんのでこのあたりは、起業家としての事業を伸ばす力が問われる用に思います。

参照

アフィリエイターの活用

DINETTE社は自社メディアの活用や、インフルエンサーへのギフティング施策のみではなく、アフィリエイトも活用し、ニッチなまつげ美容液を販売しています。

通常ニッチプロダクトはアフィリエイトを使用するのが難しいと言われていますが、SNSで話題になっていたこともあり、取り組むアフィリエイターが多いように思います。

自社メディアであるDINETTEからの集客であれば実質CPAは0円ですし、その分アフィリエイト広告を思いっきり踏むことができます。

自社メディアを持っている企業は多少高いアフィリエイト報酬を払ってでも、メディア経由の集客が安ければトータルでのCPAは下がりますので、アフィリエイトのアクセルを踏めます。

競合よりも安く集客できることでアフィリエイト予算で他社よりも高い金額を提示してくればアフィリエイターからも支持されるでしょう。

また、LPを見る限り定期縛りを導入しているため初回安くする代わりに3回以上の購入を約束しています。

定期縛りを導入することは、消費者からクレームになることもありますが、事業者側視点ではLTVを確保するための施策といえます。

今後定期縛りができなくなるかもしれませんが、まつげ美容液市場で大きくシェアをとり、認知度をあげていけば定期縛りが使えなくなっても伸ばすことはできるでしょう。

LP参照ページ

IPOかM&Aか

IPOもM&Aもどちらもあると思います。ポーラ・オルビスグループがトリコを買収したようなパターンでタレントバイも含めた高額でのM&Aはありえるでしょう。

月商5000万円になったと記載がありますし(参照)、年間10億円の売上になっていてもおかしくありません。さらに伸びればIPOというところも見えてくると思います。

自社メディアをてこにニッチ市場で拡大していくのは、尾崎社長がいる限り可能性がありそうですし、ニッチ市場でさらなる拡大、もしくは市場の大きいところの参入によって伸びが見込まれるでしょう。

男性では絶対できないかわいい化粧品作りができ、かつ成功できる経営メンバーがそろっている会社は多くはありません。

外部のECコンサルタントに頼ったブランド作りではなく自社でブランドを作り上げていく姿勢が今後も続いていくとIPOもいけるのではないでしょうか。

今後の成長戦略

今後IPOを目指していくとなると高い利益率を確保した状態で売上をのばしていくことが必要となります。

D2Cはビジネスの性質上、売上は在庫の数に比例することになります。つまり在庫をたくさんもつ金銭的体力がもてればさらなる成長はでていくでしょう。

PHOEBE BEAUTY UPというブランド基軸にSKUを展開していくこともできますし、会社のブランド立ち上げノウハウを生かして他のブランド立ち上げの可能性もありますし、今後の展開はいくつかのシナリオがあるはずです。

また、尾崎社長がここまで大きくビジネスを伸ばしてきましたが、経営幹部メンバーがさらにそろっていけば、さらに成長していくでしょう。

非常に注目しており、かつ応援していきたい企業の1つです。